働く世代は「運動したいのに続かない」状態にある
2026年8月時点でスポーツ庁が公開している最新の「スポーツの実施状況等に関する世論調査」は、2025年11月に実施され、2026年3月11日に公表された令和7年度調査です。18〜79歳を対象に、全国4万人から回答を集めています。
20歳以上で週1日以上運動・スポーツをする人の割合は51.7%でした。年代別では20代49.6%、30代45.7%、40代46.2%、50代47.4%で、60代以上より低い水準です。特に女性は20代43.5%、30代40.3%、40代41.9%、50代45.1%でした。調査は「働く人だけ」を対象にしたものではありませんが、子育て・就業と重なりやすい世代で運動習慣が弱いことを示す材料になります。(出典:mext.go.jp)
同調査では、20歳以上の1週間あたりの運動・スポーツ実施時間の中央値は69分でした。一方、20〜50代女性は週30〜40分程度にとどまり、同世代の男性の半分程度とされています。運動したい気持ちと実際の行動の差を埋めるには、最初から長時間の運動を目指すより、仕事や家事の前後に短い活動を組み込む方が現実的です。(出典:mext.go.jp)
短時間運動は「ゼロを減らす」手段として有効
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人について、歩行または同等以上の身体活動を1日60分以上、息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上行うことを目安にしています。さらに、筋力トレーニングは週2〜3日、座りっぱなしの時間を長くしすぎないことも示しています。(出典:kennet.mhlw.go.jp)
ここでいう身体活動には、スポーツだけでなく通勤、階段、家事、仕事中の移動も含まれます。したがって、昼休みに10分歩く、エレベーターの代わりに階段を使う、会議の合間に立って体を動かすといった行動も、活動量を増やす方法です。厚生労働省が示す「今より10分多く体を動かす」というプラス・テンの考え方は、まとまった時間を確保しにくい人の入口になります。(出典:kennet.mhlw.go.jp)
ただし、短時間の運動だけで長時間の座位や睡眠不足、食事の偏りをすべて帳消しにできるわけではありません。短時間運動は、健康習慣全体を改善するための現実的な一歩と位置づけるのが適切です。
まずは「1日合計」と「座りっぱなしの中断」を分けて考える
短時間運動を取り入れるときは、目的を二つに分けると続けやすくなります。一つ目は、1日の活動量を増やすこと。二つ目は、長時間の座位を途中で中断することです。厚生労働省は、長時間の座位行動をできるだけ頻繁に、例えば30分ごとに中断することを紹介しています。(出典:kennet.mhlw.go.jp)
例えば、午前と午後に3分ずつ歩く、昼休みに10分歩く、帰宅後に10分の速歩きをする、週2日はスクワットや腕立て伏せなどを無理のない回数で行う、といった組み合わせが考えられます。合計時間を記録するだけでなく、「何時間座り続けたか」「何回立ち上がったか」も確認すると、運動しない時間の改善につながります。
強度の目安は、軽い歩行なら会話がしやすく、速歩きでは息が弾む程度です。最初から汗を大量にかく必要はありません。WHOも、活動量が少ない人は少量から始め、頻度・強度・時間を徐々に増やすよう勧めています。(出典:who.int)
- 通勤や買い物の一部を歩きに変える
- 昼休みや退勤前に5〜10分歩く
- 30分以上座ったら立って移動する
- 週2〜3日は短時間の筋力トレーニングを加える
職場の環境があると、個人の意志だけに頼らず続けやすい
スポーツ庁の令和7年度調査では、就業者の週1日以上のスポーツ実施率は、勤務先で運動・スポーツを活用した取組がある場合71.1%、ない場合45.2%でした。両者には25.9ポイントの差があります。ただし、この調査は取組の有無と実施率の関連を示すもので、職場の取組だけが原因だと断定するものではありません。もともと健康意識の高い人が、取組のある職場に集まっている可能性なども考慮が必要です。(出典:mext.go.jp)
職場で実施されている取組では、勤務時間外の体操・ストレッチ・ヨガなどが最も多く、回答者が希望する取組では、勤務時間中の運動プログラムや費用補助が上位でした。個人でジムに通う方法だけでなく、短時間の休憩、歩きやすい動線、オンライン体操、階段利用の促進など、費用や移動時間を抑えた選択肢にも目を向けられます。(出典:mext.go.jp)
勤務先の制度を利用する場合は、参加が評価や人事に影響しないか、勤務時間として扱われるか、事故時のルールがあるかを確認しましょう。無理に参加を求めるのではなく、参加しない人にも不利益がない設計が望まれます。
注意点と誤解を避ける方法
「1日数分で十分」「短時間なら誰でも安全」といった断定には注意が必要です。短時間でも急に強い運動をすれば、筋肉痛や転倒などのリスクがあります。久しぶりに運動する人は、平地歩行や軽い体操から始め、痛みや強い息切れが出たら中止してください。胸の痛み、めまい、動悸、失神しそうな感覚などがある場合は運動を続けず、医療機関に相談する必要があります。
持病がある人、妊娠中・産後の人、服薬中の人、関節や心肺機能に不安がある人は、一般的な目安をそのまま適用せず、主治医や専門家に確認してください。WHOも、心疾患などがある場合は追加の注意や医学的助言が必要になることを示しています。(出典:who.int)
また、歩数計やスマートフォンの数値は便利ですが、機器や設定によって差が出ます。数字を達成できない日を失敗と考えるのではなく、前週より少し増えたか、座りっぱなしが減ったか、疲労を翌日に持ち越していないかで調整しましょう。
結論:短時間運動は「補える」が、分けて積み上げる発想が大切
働く世代の運動不足に対して、短時間運動は有効な入口です。特に、スポーツ庁調査で実施率と実施時間が低かった20〜50代では、まとまった運動時間を待つより、通勤・昼休み・仕事の中断・帰宅後に分散させる方が実行しやすいでしょう。
一方で、短時間運動は運動不足を一度に解消する特効策ではありません。目標は、まず「今より少し多く動く」こと、次に週の合計時間を増やすこと、そして筋力トレーニングと座りっぱなしの中断を組み合わせることです。体力、年齢、既往症、仕事の忙しさに合わせて、続けられる量から始めるのが安全です。
流行の運動サービスや機器を選ぶ前に、無料でできる歩行や休憩中の体操を2週間試し、続けやすさ、費用、時間、体調への影響を確認しましょう。自分に必要なのは高額な道具なのか、それとも予定に組み込める短い行動なのかを見極めることが、無理のない習慣づくりにつながります。
- 週に何分、息が弾む運動をしているか
- 1日の歩行・移動・家事を含む活動量は増えているか
- 30分以上座り続ける時間を減らせているか
- 週2〜3日の筋力トレーニングを安全に行えそうか
- 痛みや強い疲労を翌日に残していないか
読者が確認するチェックリスト
今日から始める前に、次の項目を確認しましょう。数値を一度に達成することより、現状を把握して小さく改善できるかが重要です。
- スマートフォンや時計で、普段の歩数・活動時間・座位時間を確認する
- 今週、5〜10分歩ける時間帯を三つ決める
- 仕事中に立って動くタイミングを、昼休みや会議の前後に設定する
- 週2〜3日に、軽いスクワットや自重運動を無理のない回数で試す
- 運動前後の痛み、息切れ、めまい、疲労の有無を記録する
- 持病・妊娠中・服薬中などに該当する場合は、開始前に医療専門家へ確認する
- 有料サービスを契約する前に、無料期間、解約条件、個人情報の扱い、事故時の対応を確認する